高齢者介護隊員として、これまで120件の在宅訪問に同行してきた。
その中で高齢で独居という、日本でも良く見る光景に出会うことがある。
タイでの高齢者の独居生活はどのような感じなのか、お伝えする。
一人暮らし 85歳

大きな家に一人暮らし。
家に入ると、便臭のようなにおいがした。
まぁ、築50年は経っているであろう田舎の家では、さして不思議ではなく思うほどちょっとした臭いには慣れた。
辺りを見渡すと掃除をしていないであろうホコリの溜まっている光景が目に飛び込む。
開かずの扉がある。
2階には、ベッドマットが折りたたまれて柱に掛けられている。ここでは寝ていないな。
家主が座っているその一からほとんど動かずに生活しているのではないかと想像がついた。
食べ物、飲み物、薬はその手の届く範囲に揃っている。
聞くと、トイレに行くのは面倒くさいから、ペットボトルに溜めている様子。
それでも、洗濯をしているであろうハンガーに掛かった服、調理するのであろう器具は椅子に置かれている見られるので、必要とあれば家事や自炊はできているのであろう。

しかし、いち日本人としては衛生面が気になる。
もし、日本でケアマネジメントを行うなら、家事支援を行うのではないか?
介護ヘルパーが掃除に定期的に入ることで、独居老人を体調を確認することができるし、会話相手になることもできる。
しかし、この国にはそのようなサービスはない。
一部の都市部では民間サービスとして、高いお金を払えばそういったことも可能なのだろうが、この田舎ではそのようなサービスはない。
では、この高齢者はこの先どう生活していくのか。
もちろん、当面は一人暮らしを続けるのであろう。
日本での介護ヘルパーの変わりに、オーソーモーと呼ばれる保健ボランティアがタイにはどんな田舎にも存在している。
このオーソーモー達が一緒に訪問することによって、実態を把握し、地域に住む高齢者に気を配ることができる。
そして、何か問題があれば、病院に連絡する。
私が配属されている病院は、在宅にいながら何かあった時にすぐに対応できるコミュニティ病院なのだ。
日本製のコラーゲン大量購入

高齢者の足元にあった段ボール。
その中には大量の日本製のコラーゲンの箱があった。
同僚は思わず笑っている。
おじいちゃんがコラーゲンを大量購入する様は確かに微笑んでしまうのは理解できる。
しかし、私は同時に心配になった。
ネットで大量購入することを本当に自身が必要だと思って行っているのか?誰かに騙されていないか?ほんとは必要のないものも認知機能の低下により買ってしまっていないか?
そんな心配は杞憂かもしれないが、ケアマネジメントの観点からも重要だと感じる。
さらにこの高齢者から話を聞いて行くと、壁に掛けられている写真は自身の家族、娘や孫であることが分かった。
娘は近くの街に住んでいて、孫はアメリカに住んでいるとのこと。
結局、何かあったときに重要な家族の存在なのだが、タイではまだこのような独居でも家族が居る場合が多く、完全に身寄りのない独居高齢者に私はあったことがない。
数年後には日本のような問題にぶつかる可能性もあるが、今できることは、このような高齢者が地域に居ることを病院もオーソーモーも把握することであると感じる。
タイの田舎の実態を知ることができるのは貴重な機会である。
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