「あなたは高齢者が好きなのですか?」
ある日若い医師に言われた一言。
最初はその質問の意味が解らなかった。
高齢者介護隊員として本当に何が出来たのか!?
私は、活動のルーティーンである訪問看護に行っていた。
その日は、若い医師2名も同席していたのだが、さすがに若いので訪問看護の場面に行くこともなかったのだろう、いろいろ戸惑いながら高齢者の患者と話をしていた。
車での移動中に私は医師に質問された。
「あなたは高齢者が好きなのですか?」
最初はその質問の意味が解らなかった。
確かに嫌いではないが、ハッキリと好きだと言えるほどの確信も持てなかったので、答えに躊躇していたのである。
すると、いつも一緒に在宅訪問をしていた看護師がすかさず、「KENは高齢者への対応が優しいもんねー」と医師に答えた。
そうか、在宅訪問中に対応して患者との「優しい」やりとりを見て、その医師は「この日本人は高齢者が好きなんだ」と思ったのか!?
自分としてはあまり意識していなかったのだが、タイ語でのコミュニケーションにも慣れて、患者と何気ない普通の会話や気遣う言葉が自然に出てきているなぁと改めて思い返した。
その医師に、細かな自分の思いをタイ語で伝えることはできなかった。
自分としては好きとか嫌いとかではなくて、長年高齢者に関わる仕事をしてきた結果このような対応が身に付いたんだよと言いたかった。
この「優しさ」は、国を問わず、言葉を問わず、伝わる感情であり、自分の特性かもしれないなと思った。
そして、日本人ボランティアがタイ人医師に伝えることができる唯一の事かなとも思った。
この医師とこれからも時間を一緒に過ごしていけば、もう少し日本の医療・介護の奥にある「寄り添い」を伝えることができるかもしれないと思ったが、その時すでに帰国1週間前。
そして、その医師は自分の住むアパートの隣に引っ越してきた人であったこともその時に知った。
あー、もっと早く出会えていれば、一緒に飲みに行く未来も見えたのに。
なんとも、派遣期間のミスマッチを感じた日。
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